「推進」と「促進」の違いは、物事を前へ「進める」のか、進んでいるものを「速める」のかという点にあります。
推進(すいしん)は、事業や計画などを前へ押し進めること。促進(そくしん)は、進もうとしている物事に力を加えて、はかどるのを速めることです。「合理化を推進する」「販売を促進する」という言い方が、それぞれの典型例です。
この記事では、両者の意味を辞書の記述にさかのぼって確認したうえで、迷いやすい場面での使い分けを例文で整理します。
「推進」の意味と読み方
読み方は「すいしん」
「推進」は「すいしん」と読みます。「推(お)す」と「進(すす)む」を組み合わせた言葉です。
意味は2つある
国語辞典では、「推進」に次の2つの意味が挙げられています(デジタル大辞泉)。
- 物を前へおし進めること。例:「スクリューで推進する」
- 事業や運動などを達成するように努めること。例:「合理化を推進する」
1つめは物理的に前へ進める意味で、「推進力」「ジェット推進」のように機械や乗り物について使われます。2つめが日常やビジネスで多く使う意味です。
この2つに共通しているのは、推す力が対象の後ろから加わり、前へ動かしているというイメージです。「推進」を使うとき、進める主体は自分たちの側にあります。
「促進」の意味と読み方
読み方は「そくしん」
「促進」は「そくしん」と読みます。「促(うなが)す」と「進(すす)む」を組み合わせた言葉です。
意味は「はやくはかどるようにうながすこと」
デジタル大辞泉では、「促進」は物事がはやくはかどるようにうながすことと説明されています。例として「販売を促進する」が挙げられています。
精選版 日本国語大辞典には、物事の進もうとする力に、さらに力を加えることという説明があります。これが「推進」との違いを考えるうえでの手がかりになります。つまり「促進」には、すでに進む方向にあるものを前提とし、その速度を上げるというニュアンスが含まれています。
「推進」と「促進」の違い
辞書の記述を並べると、違いは次のように整理できます。
- 推進:止まっている、あるいはこれから動かすものを、自分たちが前へ押し進める。進めることそのものに重点がある。
- 促進:すでに進む方向にあるものに働きかけて、はかどるのを速める。速さや活発さを上げることに重点がある。
見分けるときの目安
迷ったときは、対象になっている言葉を見てください。
- 計画・事業・改革・プロジェクトなど、誰かが進める対象には「推進」がなじみます(例:DX推進、働き方改革を推進する)。
- 販売・成長・理解・血行など、速めたい変化そのものには「促進」がなじみます(例:販売促進、新陳代謝を促進する)。
また、物理的に前へ進める意味があるのは「推進」だけです。「推進力」とは言いますが、「促進力」という言い方は一般的ではありません。
使い分けの例文
「推進」を使う例
- 全社をあげてペーパーレス化を推進する。
- 市はごみ減量計画を推進している。
- 新型エンジンの推進力を測定する。
- プロジェクトの推進役として若手が抜擢された。
「促進」を使う例
- キャンペーンで販売を促進する。
- ストレッチには血行を促進する効果がある。
- 補助金が設備投資を促進した。
- グループワークで学生同士の交流を促進する。
どちらも使えるが意味が変わる例
「地域活性化を推進する」は、自治体などが主体となって活性化の取り組みを進めるという意味になります。一方「地域活性化を促進する」と言うと、すでに動き始めている活性化の流れを後押しして加速させる、という含みになります。どちらが正しいというより、自分が進める側なのか、後押しする側なのかで選ぶことになります。
使う際の注意点
「販売を推進する」は不自然か
文法的な誤りではありませんが、販売のように「伸ばしたい数量・活動」を対象にするときは「販売促進(販促)」が定着しています。社内文書などで「販売推進部」という部署名が使われることもあり、組織名としては両方存在します。一般的な文章では「販売促進」を選ぶほうが自然です。
「健康を推進する」は避ける
健康は誰かが押し進める対象ではなく、増やしたい状態です。この場合は「健康増進」または「健康促進」が使われます。「健康推進課」のような行政の部署名は存在しますが、これは「健康づくり施策を推進する」という意味で組織名に用いられているものです。
豆知識
- 「推進」の物理的な意味:船のスクリュー、飛行機のプロペラ、ロケットのエンジンはいずれも「推進装置」と呼ばれます。流体を後ろへ押し出し、その反作用で前へ進む仕組みです。
- 「販促」という略語:「販売促進」は「販促」と略され、販促物・販促キャンペーンのように使われます。「販売推進」を略した「販推」は一般には使われません。
- 部署名に多い「推進」:DX推進室、働き方改革推進本部のように、組織名では「推進」が多く使われます。取り組みの主体が自分たちであることを示すためです。
まとめ
- 推進(すいしん)は、物事を前へ押し進めること。物理的に前進させる意味もある。
- 促進(そくしん)は、進もうとしている物事をうながし、はかどるのを速めること。
- 計画・事業など「進める対象」には推進、販売・成長など「速めたい変化」には促進がなじむ。
- 「推進力」とは言うが「促進力」とは言わない。物理的な意味を持つのは推進だけ。
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