バグも機械も「直る」を使います。「治る」は病気やけがが回復するときだけに使う漢字です。プログラムの不具合や機械の故障は病気ではないので、「バグが直る」「機械が直る」と書きます。
結論:どちらを使うか
| なおる対象 | 正しい漢字 |
|---|---|
| バグ・エラー・不具合 | 直る |
| 機械・パソコン・車・家電 | 直る |
| 故障・誤字・ゆがみ | 直る |
| 機嫌・天候・仲たがい | 直る |
| 風邪・けが・病気 | 治る |
迷ったときの目安は「病院で診てもらうものか」です。病院にかかるものなら「治る」、それ以外は一般に「直る」を使います。ただし後述のとおり、この使い分けは慣用に基づく目安であり、絶対の規則ではありません。
「バグが直る」──なぜ「治る」ではないのか
バグはプログラムの誤りであり、体の不調ではありません。文化庁の指針でも「直す・直る」は「正しい状態に戻す。置き換える」と説明され、用例に「誤りを直す」「故障を直す」が挙げられています。バグの修正はまさにこれに当たります。
- ◯ 再起動したらバグが直った
- ◯ アップデートで不具合が直る
- × 再起動したらバグが治った
なお、くだけた文章では「バグが治った」と書かれることもあります。これを明確な誤りと決めつける根拠はありませんが、標準的な表記は「直る」です。仕事の報告書やリリースノートなど、読み手を選べない文書では「直る」を使うのが無難です。
「バグがなおる」はどう書く?
ひらがなで「なおる」と書いても間違いではありません。漢字にするなら「直る」が標準です。似た言い回しでは次のようになります。
- バグを直す(自分が手を加える)
- バグが直る(結果として不具合が解消する)
- バグを修正する(もっとも無難な言い換え)
「機械が直る」「故障が直る」
機械についても「直る」です。国語辞典は「直る」の語義に「もとどおり役立つようになる。修復される」を挙げ、例として「機械の調子が直る」を示しています。文化庁の用例にも「機械を直す」があります。
- ◯ 修理に出したら機械が直った
- ◯ 部品を交換すれば故障は直る
- × 修理に出したら機械が治った
パソコン、スマートフォン、車、エアコンなども同じで、いずれも一般に「直る」を使います。
使い分けの原則
| 直る | 治る | |
|---|---|---|
| 意味 | 正しい状態に戻る。置き換えられる | 病気やけがから回復する |
| 対象 | 物・状態・誤り・気分 | 体の不調 |
| 公的な用例 | 誤りを直す/機械を直す/故障を直す/ゆがみが直る | 風邪を治す/けがが治る/傷を治す |
「治」という字は「治療」「治癒」に使われるとおり、体を治すことに結びついた字です。この字が入るかどうかで、対象が体かどうかを見分けられます。
迷いやすいケース
| 言い回し | 漢字 | 理由 |
|---|---|---|
| 機嫌がなおる | 直る | 気分は病気ではない。辞書も「機嫌が直る」 |
| 天候がなおる | 直る | もとの良好な状態に戻ること |
| 癖・あがり症がなおる | 直る | 辞書は「上がり性が直る」を挙げる |
| 仲たがいがなおる | 直る | 関係がもとに戻ること |
| 姿勢・服装がなおる | 直る | 整うこと |
| 虫歯がなおる | 治る | 体の治療によるもの |
癖や性格については「治る」と書かれることもあります。辞書が「上がり性が直る」を挙げていることから、本記事では病気として診断されるもの以外は「直る」に寄せていますが、この領域は書き手によって判断が分かれます。
この使い分けはどこまで決まりごとか
上で挙げた用例は、文化審議会国語分科会の報告「『異字同訓』の漢字の使い分け例」に基づいています。ただしこの報告自体が、使い分け例を「一つの参考として提示するもの」とし、「ここに示した使い分けとは異なる使い分けを否定する趣旨で示すものではない」と明記しています。
あわせて、使い分けには年代差・個人差、分野ごとの表記習慣の違いがあること、仮名で書くことを妨げるものでもないことも述べられています。
つまり「直る」と「治る」の境目は、法令のように一義的に決まっているわけではありません。公的な文書や不特定多数に向けた文章では報告の用例に沿うのが無難ですが、それ以外の場面で異なる書き方を見かけても、直ちに間違いとは言えません。
例文
- ログを調べて原因を特定したら、バグは一日で直った。
- 長年の故障がようやく直り、ラインが動きはじめた。
- 謝ったら、彼女の機嫌がすぐに直った。
- 抗生物質を飲んで、三日で熱が治った。
- けがが治るまで、練習は見学することにした。
まとめ
- バグ・機械・故障・誤りは、一般に「直る」。
- 「治る」は病気やけがが回復するときだけ。
- 判断に迷ったら「病院で診てもらうものか」で分ける。
- 文章で確実にしたいときは「修正する」「回復する」に言い換えてもよい。
- ただしこの使い分けは公的な報告でも「一つの参考」とされており、絶対の規則ではない。
同じように、読みが同じで漢字が分かれる動詞には「とれる(取れる・採れる・獲れる・穫れる)」があります。迷いやすい方は「採れる」と「取れる」の使い分けもあわせてご覧ください。